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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うサイトカイン放出症候群に対するトシリズマブ(商品名:アクテムラ)を用いた薬物療法

申請番号 02-20
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うサイトカイン放出症候群に対するトシリズマブ(商品名:アクテムラ)を用いた薬物療法
【概要】
 2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年3月時点で全世界に拡大し、現在もなお日本各地でその対応を行っている。
COVID-19は問題点として感染力、死亡率の高さが特記されるが、さらに特異的な治療法が存在せず、対症療法で患者の回復を待つしかないことが挙げられる。現在世界各地で基礎的、臨床的な研究が精力的に進められているが、依然確立した治療法は存在しない。

 COVID-19の重症化には過剰な炎症反応、サイトカインストームが関与することが示唆されており、サイトカインストームを抑制、制御可能な抗炎症、免疫療法の開発が強く望まれている。サイトカインの中でも、interleukin-6(IL-6)は、COVID-19の予後を反映するマーカーのみならず重症度と相関し、一方、抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(アクテムラ®)は、類似病態を呈するCAR-T(chimeric antigen receptor-modified T cell)療法に伴うサイトカイン放出症候群に著効し、すでに承認されている。IL-6阻害療法は、COVID-19におけるサイトカインストームに対しても画期的な治療薬となる可能性がある。

 トシリズマブ(商品名:アクテムラ)はヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体で、インターロイキン-6(IL-6)の作用を抑制し、免疫抑制効果を示す分子標的治療薬である。関節リウマチなどの膠原病疾患に使用される薬剤であるが、海外では新型コロナウイルス感染症の治療の有効性について検討が行われている。
判定 承認  

長期休校が子どもに与える影響

申請番号 02-19
申請者 小児科 上野 知香
課題 長期休校が子どもに与える影響
【概要】
 コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行への対策として、2020年3月18日までに107か国で公立の学校が休校となった。本邦では2020年2月27日、日本での感染拡大を防ぐため3月全国一斉に公立小中高校の臨時休校がなされ、また、続き4月16日には新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令がされたことで全国の学校で休校が延長された。佐賀県を含む九州地方は5月14日に緊急事態宣言が解除され、佐賀県では5月14日ころより地域ごとに学校が再開となり、6月1日より佐賀県すべての公立小中高校が学校を再開した。

 緊急事態宣言下で小児科への受診件数は大幅に減少したが、宣言が解除され緩やかに外来受診患者数が増える中、「腹痛」「頭痛」「朝起きられない」といった症状を訴えて受診する子どもが増えた印象があった。そこで本研究では、(1)休校後に症状を呈する児童が増えたかどうか(2)それに関係する要因が何か、の2点を明らかにする目的で、教育委員会を通じて地域の公立小学校に協力を依頼し、児童の保護者にアンケート調査を行う。

 (2)の要因として睡眠習慣やゲーム、TV・動画視聴などのメディア使用が関連するのではないかと仮説を立て、休校中・後のこれらに関してもアンケート内で調査する。
判定 承認  

重症心身障害者病棟における慢性便秘症に対するマクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウムの効果と副作用の検討

申請番号 02-18
申請者 薬剤部 鶴﨑 泰史
課題 重症心身障害者病棟における慢性便秘症に対するマクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウムの効果と副作用の検討
【概要】
(目的)
重心病棟入院中の患者における慢性便秘症に対するモビコール®配合内容剤の成績を前方視的に調査しその有用性を評価する。

(背景・内容)
重心病棟の定期処方を調剤するにあたり、便秘治療薬そして浣腸の処方数が多い。刺激性下剤を服用しているにも関わらず、便秘に苦しむ患者には摘便を実施する。便秘を改善することは、患者のQOLを向上させ、患者・看護師双方の負担を軽減させる意味で重要である。そこで2日に1回以上、浣腸を実施して排便している患者に対して、英国NICE(National Institute for Health and Care excellence)ガイドラインで小児慢性便秘症の第一選択薬となっておりかつ「小児慢性機能性便秘診療ガイドライン」(日本小児栄養消化器肝臓学会)においても推奨されている浸透圧下剤の1つであるモビコール®配合内容剤を、現在患者が服用されている便秘治療薬に加える(add on)形で処方、服用した際の排便の回数、便の性状及び救済薬の使用回数を主な評価指標として、本薬剤の効果について評価する。
判定 条件付承認  

『副看護師長業務マニュアル』の見直し ~看護管理能力の向上を目指して~

申請番号 02-17
申請者 副看護師長研究会 橋本 敦美
課題 『副看護師長業務マニュアル』の見直し
 ~看護管理能力の向上を目指して~
【概要】
 既存の『副看護師長業務マニュアル』(以下、マニュアル)が行動レベルの内容でないため活用出来ておらず、改訂されていなかった。そこで、副看護部長に必要な特性の理解と看護管理者の質の均一化を図り、実践に役立てることで看護管理能力の向上を図る事を目的として既存のマニュアルの改訂に取り組んだ。中間管理者(副看護師長)能力開発プログラムの自己評価表を用いて見直し・作成を行いマニュアルの内容の充実を図った。マニュアル改訂前後で看護管理能力に変化があったか、看護管理能力の向上に役立てられたかを調査し、示差を得たので報告する。
判定 承認  

副看護師長が計画した救急外来学習会における課題 ~コンピテンシー・モデルからの一考察~

申請番号 02-16
申請者 副看護師長研究会 上村 香織
課題 副看護師長が計画した救急外来学習会における課題
 ~コンピテンシー・モデルからの一考察~
【概要】
 当院の役割は地域医療支援病院であり、救急患者を適切に対応できる看護師の育成を目的とした救急外来学習会を計画した。しかし学習会の実施率は私たちの予想を下回る結果であったため、コンピテンシー・モデルを用いた振り返りを行った。副看護師長が困難と感じている具体的内容を明らかにし、どのように行動をとれば効果的に学習会が実践出来たか方略を考察したいと考えた。
判定 承認  

ムセがないと思われる患者へ頸部聴診法を用いた客観的評価の導入 ~患者に合った食事方法を目指して~

申請番号 02-09
申請者 13病棟 森井 沙季
課題 ムセがないと思われる患者へ頸部聴診法を用いた客観的評価の導入
 ~患者に合った食事方法を目指して~
【概要】
 現在、嚥下機能評価は看護師の主観的観察により判断している。しかし、昨年、主観的にはムセがないと判断されたが、胸部レントゲン検査やCT検査の報告書には慢性的な嚥下性肺炎があると診断された患者がいた。不顕性誤嚥は誤嚥性肺炎の原因のひとつだが、主観的にムセがみられないため、見過ごされている。食物が安全に嚥下されているか、食事することの負担はどのくらいなのかは、外見からでは判断が難しい。

 嚥下障害の有無は一般的にVF検査で診断される。信頼性の高い検査であるが、重症心身障害児(者)は、姿勢を保つことが難しく、苦痛を伴い、侵襲が大きいために容易に行う事ができない。さらに、当病棟の患者の多くは、主観的なムセがなく、誤嚥のリスクが低いと判断され、VF検査の実施件数は少ない現状にある。

 嚥下状態の観察として、頸部聴診法がある。頸部聴診法は、嚥下音や嚥下前後の呼吸音を頸部より聴診し、非侵襲的に誤嚥や咽頭部の貯留を判定でき、ベッドサイドでも簡便に行うことができる。頸部聴診法には聴診器を使用する方法と咽喉マイクを使用する方法がある。昨年A病棟では、咽喉マイクを購入したが、使用に至っていない現状にある。その理由として、頸部聴診法の経験がない看護師が多く、正常音・異常音の判断が困難であるからだと考えられる。咽喉マイクを使用することにより、頸部聴診法の経験がある看護師や言語聴覚士とともに複数人で嚥下音の聴取が可能となり、頸部聴診法による客観的評価につながるのではないかと考える。

 そこで今回、主観的にムセがない摂食機能訓練中の患者に、咽喉マイクを用いて不顕性誤嚥の実態を明らかにし、異常音が認められた患者の食事形態・介助方法・訓練方法の見直しを行い患者に合った食事方法を検討することにした。
判定 承認  

重症心身障がい児(者)病棟における感染予防対策 ~ESBLに対する感染予防対策を整える~

申請番号 02-14
申請者 12病棟 芳田 真美
課題 重症心身障がい児(者)病棟における感染予防対策
 ~ESBLに対する感染予防対策を整える~
【概要】
 A病棟は、定床55床、入院患者数54名の重症心身障がい児(者)病棟である。重症児スコア判定の割合は57%であり、医療依存度の高い患者を対象としている。入院患者は、人工呼吸器管理など、医療依存度の高い乳幼児から行動障害を有する高齢者まで複雑多岐であり、基礎疾患の複雑化がみられている。また、患者の重症化に伴い、医療的ケアを必要とする患者の割合が年々増加している。

 近年、重症心身障がい児(者)の程度は重症化しており、気管切開や胃ろうがあり常時人工呼吸器を使用する者が増加している。長期に医療的治療を行う中で、状態に応じて抗菌薬の使用を行うが、ESBLなど薬剤耐性菌の広がりが院内感染において重要な問題となっており、長期の治療やケアによる医療関連感染や耐性菌伝播の防止が求められている。ESBL産生菌のリスクファクターは、長期入院者、人工呼吸器管理、尿道カテーテルの長期留置、抗菌薬の使用が挙げられているとされている。A病棟でも、ESBL患者が46.2%確認されており、痰や尿からの排出が多い。耐性菌を保菌していても一般的には症状を有さず問題が生じる事はないが、免疫力が低下している状態であると難治性の感染症の発症や肺炎、尿路感染症など予後に重大な影響を及ぼす事があると言われている。実際にA病棟でも保菌者の多くは、肺炎や尿路感染を繰り返し、治療を余儀なくされるケースが多くみられている。

 ESBLの感染経路は、接触感染であり、医療者の手指や医療器具などを介して伝播する事が多く、院内での急速な拡大の恐れがある。実際に、吸引やおむつ交換など患者に関わる機会が多いが、目に見えない菌である為、スタッフの意識も低く、知らぬ間に伝播させている事も考えられる。患者に関わるスタッフは、適切な感染予防を考慮したケアを行うにあたり、ESBLがもたらす患者への影響や、患者の状態の把握に努めていく必要がある。

 しかし、実際の現場では、十分な感染予防対策がとれているとはいえず、ESBLについてスタッフの知識や標準予防策に対する意識の低さを感じている。ESBLの感染経路は接触感染であるが、ケア実施時、正しいPPEの実施率が58%であり、確実な標準予防策が行えていない。そこで、本研究は、患者との接触場面を抽出し、環境調整及びスタッフ教育を行うことで、スタッフの行動に変化が見られたか検証することで、重症心身障がい児(者)病棟における医療関連感染や耐性菌伝播を防止にむけた一助になると考える。
判定 条件付承認  

意思疎通が困難な人工呼吸器装着患者の離床に取り組んで ~重症心身障がい児(者)のQOLについて考える~

申請番号 02-13
申請者 11病棟 福島 秀起
課題 意思疎通が困難な人工呼吸器装着患者の離床に取り組んで
 ~重症心身障がい児(者)のQOLについて考える~
【概要】
 車椅子への離床を行うことは、肺の機能、消化管運動の改善等の効果が期待できる。当病棟では、人工呼吸器装着の患者は、肺炎、無気肺の予防として腹臥位のポジショニング、カフアシストを実施している。しかし、気胸の既往、体型による腹臥位が困難な場合もあり、それらが出来ない患者もいるため、離床の必要性があるのではないかと考えた。しかし、人工呼吸器装着の患者は、患者の状態、安全面のリスク、マンパワーが必要であり、当病棟ではなかなか離床ができていない現状がある。

 A氏は無酸素脳症後遺症により、意思疎通が困難である。肺炎の発症頻度も多い傾向にある。想いを表出すること、欲求を充足させること、感情、望みを伝えることができない。しかし、本人の気持ちを考え、もしかしたらこういうことを望んでいるのではないかと思い、行動することが重要ではないかと考えた。A氏は20歳代であり、発達段階でみると初期成人期にあたり、家庭や学校を離れ、多くの人との関係を築く時期である。社会活動へ参加し、積極的に行動する時期であると思われる。しかし、現状はベット上での生活であるため、少しでも活動的な生活を送ってもらいたいと考えた。

 バイタルサインや全身状態を十分考慮し、車椅子への離床を行い、少しでもベットから離れた生活を送ってもらいたいと考える。離床という介入を行うことで、肺の機能の改善、消化管運動の改善、刺激による生活リズムの獲得、表情の変化などが考えられる。A氏にどのような効果が表れるのか、検証したいと考える。また、今回A氏に対してQOLの向上を目的としても離床の介入を行う。意思疎通が困難なため、その人らしさを考え、最良の関わりとはなにか、検討することは重要だと考える。

 当病棟の患者は入院生活が長期にわたっている患者も少なくない。患者の生活の場となっているため、さらに良いものになって欲しいと思っている。この介入を通して、当病棟の重症心身障がい児(者)のQOL向上のための看護について考えたいと思い、今回の研究とした。
判定 不承認  

当院入院化学療法における手技統一に向けての取り組み

申請番号 02-12
申請者 3病棟 牟田 千史
課題 当院入院化学療法における手技統一に向けての取り組み
【概要】
 A病棟は6つの診療科が混在する病棟であり、その中で入院化学療法は昨年度5人12件であった。自分自身もA病棟経験6年を有するが、化学療法の知識・経験が浅く、取り扱いについての知識や手順に対し不安を感じた。情報交換の中で共同研究者や看護師も不安を抱えているという声を耳にした。院内にも化学療法看護マニュアル(2011年度作成)はあるが、化学療法は進化しておりCVポートや支持療法の導入等マニュアルに載ってない手技も増えている。そこで、他施設での認定看護師の取り組み、マニュアル、文献や先行研究をもとに勉強会の計画・実施を行い、化学療法の手順、手技統一をはかりたい。
判定 条件付承認  

退院支援・調整における看護師のスキルアップを目指して ~退院支援リフレクション・カンファレンスを導入して~

申請番号 02-11
申請者 2病棟 江島 利恵
課題 退院支援・調整における看護師のスキルアップを目指して
 ~退院支援リフレクション・カンファレンスを導入して~
【概要】
 退院支援・調整を行うにあたり看護師は患者のIADLを家族やケアマネージャーと情報交換し、ADLの向上・拡大に向けたケアや疾病コントロールを住宅で継続できるよう援助していく必要がある。その為、豊富な経験や知識を求められている。

 当病棟では2019年度「看護師が抱える退院支援における困難感」、2020年度「患者・家族が抱える退院支援への不安」について調査した。結果、看護師は患者のリハビリ状況に応じて介護保険の申請や区分変更の検討が遅く、患者・家族が抱える介護力や金銭的な問題の把握に時間を要する現状が明らかになった。また看護師の経験や知識の差が影響していた。

 この結果を踏まえ本年度は退院した患者の退院支援をリフレクションできるようカンファレンスを計画した。この取り組みにより経験の浅い看護師へのアドバイスや困難事例への対応を検討する機会となり看護師の退院支援へのスキルアップへと繋げることができるのではないかと考える。
判定 条件付承認  

結核病棟に入院する患者の栄養状態に関する実態調査

申請番号 02-10
申請者 1病棟 原槙 恭子
課題 結核病棟に入院する患者の栄養状態に関する実態調査
【概要】
 令和元年1病棟の研究において2017年2月より2019年3月に結核病棟に入院した患者100名のうち、ADLが維持できた患者は、栄養状態の改善がみられていた。さらに、入院患者の平均在院日数は、88,84日であり、全国平均65,6日と比較すると長期になっていた。

 結核の患者は、低栄養、食欲不振で入院してくることが多い。これは、入院前の生活習慣が関係していることもあるが、結核に罹患することにより栄養状態の低下、食欲の低下が出現する可能性もある。入院後病状を改善するためには、確実な内服とともに、栄養状態の改善が必要である。患者は結核を発症してから入院するまで2週間以上かかることがあり、栄養状態を把握するうえでは入院前の食事摂取状況を考慮する必要がある。

 入院前から入院後、退院時までの栄養状態や食事摂取状況、NST介入の有無、検査データ等を調査することにより、栄養状態の改善や入院期間の短縮に向けて具体的にどのように介入するべきか検討することを目的とし、研究に組むことにした。
判定 承認  

COVID-19(coronavirus disease 2019)に対する院外トリアージシステムと地域病床運営の最適化

申請番号 02-09
申請者 呼吸器内科 田中 将英
課題 COVID-19(coronavirus disease 2019)に対する院外トリアージシステムと地域病床運営の最適化
【概要】
 佐賀県ではプロジェクトMを中心に独自の救急患者トリアージを行い、感染が疑われる症例は感染症指定病院に搬送することで、院内感染のリスクを最小限にとどめることに成功している。しかし、COVID-19の第2波が発生した際に、現在のトリアージシステムで十分に対応できるかどうかは未知である。

 今回、佐賀県内及び隣接する福岡県の感染症指定病院で実際に受診したCOVID-19患者並びに疑似症例の初期症状や行動歴、治療経過を収集及び解析することで、COVID-19第2波に対応するための地域にマッチした流動性のあるトリアージシステムを考案する。また、重症化やPCR陰性化までの期間を検証することで、地域における病床運営の最適化を考案する。

 佐賀大学医学部附属病院高度救命センターが主導する臨床研究であり、共同研究施設として参加する。
判定 承認  

血清マイクロRNA解析による新型コロナウイルス感染症重症度マーカーの開発

申請番号 02-08
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 血清マイクロRNA解析による新型コロナウイルス感染症重症度マーカーの開発
【概要】
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は現在全世界に拡大している。COVID-19の早期診断のためPCR検査に加えLAMP法、抗原検査などが開発されてきている。COVID-19は2割の患者が重症化するといわれているが、どのような患者が重症化するのかはまだ明らかではなく、重症化を予測するバイオマーカーの開発が望まれる。

   本研究は疾患特異的に変動する血中マイクロRNAに着目し、PCR検査による診断確定例の血中マイクロRNAを解析することにより、COVID-19の重症度評価・予後予測に有用なバイオマーカーを開発することを目的とする。

 本研究は高邦会高木病院の林真一郎医師を研究責任者とし、高木病院臨床微生物・遺伝子検査研究センターおよび国際医療福祉大学にて解析が行われるため、研究参加に文書で同意を得た患者の臨床情報を匿名化し血清(臨床検査の残血)とともに同病院・大学に提供する。研究期間は承認を得た日から令和5年3月31日までである。
判定 承認  

重症心身障害児(者)における腎機能評価におけるシスタチンC(Cys-C)の有用性の検討

申請番号 02-07
申請者 小児科 陣内 久美子
課題 重症心身障害児(者)における腎機能評価におけるシスタチンC(Cys-C)の有用性の検討
【概要】
 腎機能の指標として一般に用いられる血清Cr値は筋肉量、運動などの影響を受け、正確な腎機能を反映していない場合がある。一方Cys-Cは全身の細胞で産性される低分子タンパクで、腎糸球体を自由に通過することができ、血清Cys-C値は、筋肉量、運動の影響を受けることがなく、さらに血清Cr値と比較し、早期の腎機能障害に対する感度、特異度が高いとされている。

 以上より、筋肉量の低下や、逆に過度の筋緊張などを認めることが多い重症心身障害児(者)では、腎機能を血清Cr値のみで評価することは過少・過大評価につながる危険があること、重症心身障害児(者)は薬剤性の腎障害、腎尿路奇形、腎尿路結石や反復する尿路感染症の伴う急性・慢性の腎機能障害を起こすことも多いことから、重症心身障害児(者)における急性腎障害や早期の腎機能低下の発見に血清Cys-C値は有用であると考えられるが、そのエビデンスは希薄である。

 本研究では、重症心身障害児(者)の腎機能評価、特に早期、または軽度の腎機能障害の検出における血清Cys-C値の有用性についてのエビデンス確立を目的とする。保険診療内の診療行為として測定した血清Cys-C値と血清Cr値を含む各種腎機能パラメータを比較検討し、その有用性を検証する。
判定 承認  

小児新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)を用いた薬物療法

申請番号 02-06
申請者 小児科 山本 修一
課題 小児新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)を用いた薬物療法
【概要】
 2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年3月時点で全世界に拡大した。日本においては2020年1月に指定感染症に指定されてからも徐々に感染は拡大し、特定の地域においては医療提供体制崩壊の懸念も出てきている。

 COVID-19は問題点として感染力、死亡率の高さが特記されるが、さらに特異的な治療法が存在せず、対症療法で患者の回復を待つしかないことが挙げられる。現在世界各地で基礎的、臨床的な研究が精力的に進められているが、依然確立した治療法は存在しない。

 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスSARS-CoVと類似している。これまでの基礎的な研究により、SARS-CoVの宿主への感染の成立には、宿主のセリンプロテアーゼが必須であることが判明しており、セリンプロテアーゼの阻害薬がSARS-CoV感染阻止、あるいはSARSの病態進行阻止に有用である可能性が示唆されている。先日発表された研究論文(Hoffmann et al.)によると、SARS-CoV-2の感染成立にもセリンプロテアーゼが関与することが証明され、SARSと同様、セリンプロテアーゼ阻害薬がCOVID-19の治療にも有用である可能性が示された。事実、試験管レベルではあるが、当該論文では、SARS-CoV-2の培養細胞への侵入をセリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸カモタットが強力に抑制した。

 メシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)はメシル酸カモスタット同様セリンプロテアーゼ阻害薬であり、2020年3月、東京大学の井上らは、メシル酸ナファモスタットがSARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻止することができる可能性を報告した。コアヒビターは2002年に薬価基準収載され、これまでに急性膵炎、DIC、対外循環時の凝固防止に使用されている。特に急性膵炎においては内科、外科での使用経験は豊富であり安全性も確立している医薬品である。副作用としてはショック、アナフィキラシー、電解質異常、白血球・血小板減少、肝機能障害等が報告されているが、いずれもその発生頻度は1%未満とされている。

 以上、本申請は、COVID-19患者へ、疾患適応のないコアヒビターの投与を計画するものである。
判定 承認  

COVID-19に帯するシクレソニド吸入剤(オルベスコ)を用いた薬物療法

申請番号 02-05
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 COVID-19に帯するシクレソニド吸入剤(オルベスコ)を用いた薬物療法
【概要】
 新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としてシクレソニド吸入剤(オルベスコ)を使用したい。コロナウイルス感染症は7種類あり、4種類は風邪ウイルスとされ軽症だが、残りの3種類に関してはSARS-CoV、MERS-CoV、そして本ウイルスとされている。これまでもSARS、MERSに関して治療法は確立されておらず、基本的に対症療法である。本疾患は重症化するとARDSを発症する事が多く、その重症化あるいは重症化予防のため経験的な加療を行う必要がある。

 シクレソニドは吸入投与後、肺炎で加水分解を受けて活性代謝物に変換されるプロドラッグである。シクレソニドは吸入用ステロイドとして未熟児・新生児から高齢者まで広く用いられる安全な薬剤で気管支喘息を適応症として承認されており、気道の慢性炎症の抑制に効果があるとされる。COVID-19の肺障害の病理は未だ明らかにされてないが、MARSやSARSから推定されるところでは、ウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージなどに感染し局所の炎症を惹起すると考えられ、シクソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある肺障害の治療に有効であることが期待されている。国内臨床試験における副作用発現率は、成人7.7%(45/588例)、小児(2/203例)である。成人では呼吸困難、嗄声、発疹、尿蛋白、AST・ALT増加がみられており、小児では気管支痙攣、肝機能異常が1例みられている。禁忌は、有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者、本剤の成分に対して過敏症の既往のある患者とされ、結核の患者は原則禁忌である。

 本薬剤使用の際には、藤田医科大学の観察研究「ファビピラビル等の抗ウイルス薬が投与されたCOVID-19患者の背景因子と治療効果の検討」に登録するため、臨床情報を匿名化し同大学に提供する。
判定 承認   

新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビル(アビガン)を用いた適応外使用及びCOVID-19に関するレジストリ研究

申請番号 02-04
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビル(アビガン)を用いた適応外使用及びCOVID-19に関するレジストリ研究
【概要】
 新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としてファビピラビル(アビガン)を使用したい。

 コロナウイルス感染症は7種類あり、4種類は風邪ウイルスとされ軽症だが、残りの3種類に関してはSARS-CoV、MERS-CoV、そして本ウイルスとされている。これまでもSARS、MERSに関して治療法は確立されておらず、基本的に対症療法である。本疾患は重症化するとARDSを発症することが多く、その重症化予防のため経験的な加療を行う必要がある。

 ファビピラビルは抗ウイルス薬であり、効能・効果は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(但し、ほかの抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」として厚生労働省の認可を受けている。その作用機序は、生体内で変換された三リン酸化体(T-705RTP)がウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害するもので、インフルエンザウイルス以外のRNAウイルスへも有効性が期待されている。SARS-CoV-2ウイルスに対しても増殖阻害効果があることから、COVID-19に対して日本で適用外使用されている。投与対象は、感染症学会の「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」により、重症度の高い症例への投与が示唆されている。また催奇形性を有する可能性から、妊婦、妊娠の可能性のある患者には禁忌とされている。

 本薬剤使用の際には、藤田医科大学の観察研究「ファビピラビル等の抗ウイルス薬が投与されたCOVID-19患者の背景因子と治療効果の検討」に登録するため、臨床情報を匿名化し同大学に提供する。また、国立国際医療センター(NCGM)のCOVIDレジストリ研究(後ろ向き観察研究)へも臨床情報を匿名化し提供する。
判定 承認   

新型コロナウイルス感染症に対するヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラニケル)を用いた薬物療法

申請番号 02-03
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 新型コロナウイルス感染症に対するヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラニケル)を用いた薬物療法
【概要】
 新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としてヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラニケル)を使用したい。

 コロナウイルス感染症は7種類あり、4種類は風邪ウイルスとされ軽症だが、残りの3種類に関してはSARS-CoV、MERS-CoV、そして本ウイルスとされている。これまでもSARS、MERSに関して治療法は確立されておらず、基本的に対症療法である。遺伝子はSARS-CoVに類似していると考えられており、SARS流行期に本薬剤に効果があったとの報告をもとに、本疾患に対してもすでに中国や本邦で使用し改善したとの報告がある。本疾患は重症化するとARDSを発症することが多く、その重症化あるいは重症化予防のため経験的な加療を行う必要がある。

 副作用は非常に少ないとされている。最もよく認められる副作用は吐き気と下痢であるが、内服しているうちに改善することも多く、またヒドロキシクロロキンにより視力の低下や失明(網膜症や黄斑変性症)が起こりうることが報告されている。このような副作用は、高用量(累積投与量200g以上)を長期間内服し続けている患者、60歳以上、著しい腎障害がある患者に起こりやすいことが知られている。投与前に眼科受診が望ましいが、病状的に受診困難であれば日光にあたるのを避け、サングラスをするなどの対応を検討する。本治療を行った場合には肺炎が改善し救命できる可能性がある。一方で行わなかったとしても本感染症に対する治療薬がないため、対症療法で改善する可能性もある。
判定 条件付承認   

新型コロナウイルス感染症に対するロピナビル・リトナビル(カレトラ)を用いた薬物療法

申請番号 02-02
申請者 呼吸器内科 小林 弘美
課題 新型コロナウイルス感染症に対するロピナビル・リトナビル(カレトラ)を用いた薬物療法
【概要】
 新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としてロピナビル・リトナビル(カトレラ)を使用したい。

 コロナウイルス感染症は7種類あり、4種類は風邪ウイルスとされ軽傷だが、残りの3種類に関してはSARS-CoV、MERS-CoV、そして本ウイルスとされている。これまでもSARS、MERSに関して治療法は確立されておらず、基本的に対症療法である。遺伝子はSARS-CoVに類似していると考えられており、SARS流行時に本薬剤に効果があったとの報告をもとに、本疾患に対してもすでに中国や本邦で使用し改善したとの報告がある。本疾患は重症化するとARDSを発症することが多く、その重症化あるいは重症化予防のため経験的な加療を行う必要がある。

 カレトラの副作用は主に下痢、嘔気・嘔吐、腹痛などの消化器症状である。また、すでに飲んでいる薬剤との相互作用もあるため、内服時には抗凝固剤(ワーファリン)や免疫抑制剤など内服している場合は適宜血中濃度を測定しながら経過観察する必要がある。重篤な副作用として、高血圧、糖尿病、膵炎、出血傾向、肝機能障害、肝炎、徐脈性不整脈、中毒性表皮壊死融解症など頻度不明であるが報告されている。HIV感染症に対する使用成績調査では、総症例1184例中649例(54.8%)に副作用が認められている。
判定 条件付承認  

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)を用いた薬物療法

申請番号 02-01
申請者 小児科 山本 修一
課題 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)を用いた薬物療法
【概要】
 2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年3月時点で全世界に拡大した。日本においては2020年1月に指定感染症に指定されてからも徐々に感染は拡大し、特定の地域においては医療提供体制崩壊の懸念も出てきている。

 COVID-19は問題点として感染力、死亡率の高さが特記されるが、さらに特異的な治療法が存在せず、対症療法で患者の回復を待つしかないことが挙げられる。現在世界各地で基礎的、臨床的な研究が精力的に進められているが、依然確立した治療法は存在しない。

 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスSARS-CoVと類似している。これまでの基礎的な研究により、SARS-CoVの宿主への感染の成立には、宿主のセリンプロテアーゼが必須であることが判明しており、セリンプロテアーゼの阻害薬がSARS-CoV感染阻止、あるいはSARSの病態進行阻止に有用である可能性が示唆されている。先日発表された研究論文(Hoffmann et al.)によると、SARS-CoV-2の感染成立にもセリンプロテアーゼが関与することが証明され、SARSと同様、セリンプロテアーゼ阻害薬がCOVID-19の治療にも有用である可能性が示された。事実、試験管レベルではあるが、当該論文では、SARS-CoV-2の培養細胞への侵入をセリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸カモスタットが強力に抑制した。

 メシル酸ナファモスタット(商品名:コアヒビター)はメシル酸カモスタット同様セリンプロテアーゼ阻害薬であり、2020年3月、東京大学の井上らは、メシル酸ナファモスタットがSARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻止することができる可能性を報告した。

 コアヒビターは2002年に薬価基準収載され、これまでに急性膵炎、DIC、対外循環時の凝固防止に使用されている。特に急性膵炎においては内科、外科での使用経験は豊富であり安全性も確立している医薬品である。副作用としてはショック、アナフィキラシー、電解質異常、白血球・血小板減少、肝機能障害等が報告されているが、いずれもその発生頻度は1%未満とされている。

 以上、本申請は、COVID-19患者へ、疾患適応のないコアヒビターの投与を計画するものである。
判定 条件付承認