令和5年度議事録
摂食嚥下障害のある重症心身障害児(者)に対してオリブ油を用いた舌清掃の有効性~有効的な誤嚥性肺炎の予防を目指して~
申請番号 | 05-13 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 山口 智絵美 |
課題 | 摂食嚥下障害のある重症心身障害児(者)に対してオリブ油を用いた舌清掃の有効性~有効的な誤嚥性肺炎の予防を目指して~ | |
【概要】 今回研究対象のA氏は、自己による口腔ケア・含嗽ができず介助が必要な状態である。また、摂食嚥下障害があり、誤嚥性肺炎の危険性がある。食後、口腔内に食物残渣が目立ち、舌の運動性が低下しているため細菌が付着しやすくなり舌苔の原因になっている。 西によると「オリブ油には抗菌作用・潤滑作用・消臭作用がある。」と述べている。A氏は1日3回介助により毎食後モアブラシで口腔内を清掃後、歯ブラシでブラッシングし、モアブラシで再度清掃している。モアブラシで清掃する際は水を使用し、舌クリーナーは使用していない。舌クリーナーは以前使用していたが、舌を磨きすぎると口腔内の乾燥や炎症の原因になる事を懸念して現在は使用していない。 A氏にオリブ油を用いた舌清掃を行うことで舌を清潔に保ち、歯科口腔疾患の予防に繋がるのではないかと考えた。また、オリブ油を用いた舌清掃による摂食嚥下障害を改善する事で誤嚥性肺炎を予防する事ができるのではないかと考えた。取り組みとしてオリブ油を用いた口腔ケアの有効性について評価する。 |
||
判定 | 承認 |
慢性便秘症の重症心身障害児(者)の排便促進 ~腹臥位療法を実施して~
申請番号 | 05-12 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 福丸 由麻 |
課題 | 慢性便秘症の重症心身障害児(者)の排便促進 ~腹臥位療法を実施して~ | |
【概要】 重症心身障害児(者)では、腸管運動低下に加え、協調運動も低下しているので慢性便秘となりやすい。また、抗けいれん薬の服用や筋緊張異常・運動量低下による影響などによっても生じる。 今回研究対象のA氏は、平日の11~13時までの食事以外、日中ベッド上にて臥床状態で過ごすことが多い。A氏は、慢性便秘症により緩下剤を内服しているが、軟便と硬便を繰り返し、内服での排便コントロールは困難な状況であった。A氏の便秘の原因である内服の副作用・長期臥床・活動量低下による消化管運動低下などに介入し、自然排便を促進することで患者の苦痛軽減に繋がると考えた。 先行研究では、活動の著しく低下した高齢者の廃用症候群(意識状態の低下、拘縮、痰の貯留、失禁、便秘など)の予防や改善に腹臥位療法が良好な結果を得ているといわれている。また、腹臥位療法で排便の回数、量が増加したと報告がある。西沢らは「便秘症の患者に対して1日2回30分腹臥位療法を施行した。S状結腸と直腸の位置関係、腸管膜の伸展刺激、自重による物理的刺激により腸蠕動が促進され排便回数が増加した。」と述べている。 A氏は自力体動がないため腹臥位療法を取り入れることで腸蠕動の促進につながり、自然排便を促せるのではないかと考えた。しかし、仰臥位から腹臥位への体位変換は循環動体の変動を生じやすい。A氏は、言語的コミュニケーションは不可能であるため不快感を伝えることは困難である。そのため、実施前後のバイタルサイン測定や実施中の表情の変化を観察し、本人にとって苦痛を生じないように介入していきたい。 |
||
判定 | 承認 |
右末梢性顔面神経麻痺による嚥下障害のある患者への嚥下訓練方法の習得指導を行った効果
申請番号 | 05-11 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 野中 優 |
課題 | 右末梢性顔面神経麻痺による嚥下障害のある患者への嚥下訓練方法の習得指導を行った効果 | |
【概要】 嚥下とは、「口腔に運ばれた食塊や液体が、咽頭・食道を経て胃内へ送られるまでの一連の運動過程」をいう。嚥下して胃に入るまでの時間は固形物で約30秒、液体では数秒である。嚥下運動には、口腔、咽頭、食道の筋肉や、これらを支配する三叉・顔面・迷走・舌下・舌咽神経などが関与している。これらがなんらかの原因によって障害され、食塊や液体を口腔から胃まで円滑に送り込むことが困難となる。 今回研究対象のA氏は、自宅で転倒し首がガラス戸に刺さった状態で発見され、外傷性出血性ショックのため前医へ救急搬送。入院後、人工呼吸器管理となり、輸血、頚部血種除去、ガラス片除去術を行い人工呼吸器から離脱される。手術後より右顔面神経麻痺症状による嚥下障害があり、嚥下訓練をしながら胃管より経管栄養を注入されていたが、徐々に経口での摂取が可能となり、胃管抜去され、当院へリハビリ目的で入院となった。 入院時、むせこみや「のみこみずらいときがある」と発言がみられた。身体的状況として、1つめに、舌運動の低下によって食塊が送り込まれず口腔内に残り、粘性の低い食塊は、嚥下反射の準備ができる前に咽頭へ流れ込むことによって、嚥下前に誤嚥を生じる可能性がある。2つめに、声帯閉鎖不全や咽頭挙上不全によって咽頭を通過する食塊の一部が咽頭内に侵入し、さらに、気管内に流れ込むことによって嚥下中に誤嚥を生じる可能性があり、準備期と口腔期に嚥下障害が認められた。しかし、当院に入院後ゆっくりではあるが機能回復傾向であり、嚥下ミキサー食を毎食8~9割程度まで摂取可能となった。補助食品の導入で必要摂取量(1500Kcal/日)は満たしているが「形がないものは食べる気がしない」「形があるものだったらもっと食べられる」と訴えあり、少しでも意欲的に食事摂取することが必要ではないかと考えた。食事は、生命の維持、健康の保持・増進など生理的意義を持つ。さらに人とともに楽しみながら食事をすることは、人間関係を深め、生活に満足感や活力を与えるなど精神心理的・社会的意義をもつ。したがって、なんらかの原因・誘因で嚥下障害をきたし、経口摂取が障害された場合は、身体的苦痛のみならず、精神心理的・社会的側面にも大きな打撃を与えることになる。また、低栄養状態が続くとサルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドロームなどの状態になることが考えられる。今後A氏は、自宅退院を希望しており現在の食事形態を自宅で準備し摂取することは困難なことが考えられる。谷口は「嚥下訓練の主な目的は3つあります。(1)摂食・嚥下にかかわる各器官の機能維持と改善、(2)呼吸機能を維持・改善して、誤嚥物の喀出力を養い、誤嚥性肺炎を予防すること、(3)食事前の準備体操として嚥下体操を行い、スムーズな食事摂取を促すことです。」と述べている。現在リハビリで回復してきた嚥下機能が維持できるよう、文献をふまえ退院後も継続可能な嚥下訓練方法の習得について取り組みたいと考える。 |
||
判定 | 承認 |
軽度精神発達遅滞がある左大腿骨頸部骨折患者への離床に向けた関わり
申請番号 | 05-10 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 中野 優香 |
課題 | 軽度精神発達遅滞がある左大腿骨頸部骨折患者への離床に向けた関わり | |
【概要】 【研究の背景】 精神発達遅滞とは知的機能、すなわち知能指数(I Q)が70以下の状態であること、適応行動に制限や制約が伴う状態であること、これらの状態が発達期に生じることという3つの条件を満たす場合である。今回研究対象のA氏はB病院入院中、転倒により左大腿骨頸部骨折し、当病院に入院となった。その後、後方アプローチによる人工骨頭置換術され、当病棟にリハビリ目的にて転棟となった。A氏はV I Q62、P I Q62、F I Q59であり軽度精神発達遅滞があり、精神状態としては意欲や活動性のムラや食事摂取にムラがみられた。 当病棟では、酸素カートを使用し見守りの中歩行している。日常生活動作の中からトイレに座る時や端座位時に内旋するような姿があり、その都度脱臼しやすい体位について説明を行っているが、本人の理解状況の把握が難しく、効果的な指導となっていないと感じることがあった。また端座位やベッド臥床は、自分で行われることから、本人の脱臼肢位の理解が不十分な中、常に脱臼のリスクがある状態であると考える。A氏は日中臥床している時間が多く、声かけするも入浴やトイレ誘導などに時折拒否が見られる状態であった。しかし、午後のトイレ誘導には応じる時もあるため、本人の日内変動を把握し、1日の生活リズムの中で離床できている時間帯に着目し脱臼予防の介入を行うことで脱臼肢位の習得に繋がるのではないかと考えた。現在10時15時に声かけにてトイレ誘導を実施しているため、まず排泄チェックデータより、トイレ誘導の実施が出来ている時間帯の把握を行なった。その結果10時誘導16%、15時63%であり15時のトイレ誘導が活動出来ていることがわかった。金井一薫は1)「健康とは単に元気である事だけでない。」と述べている。患者が本来持っている力を引き出すため、患者の活動意欲が向上する時間帯に着目し、その時間帯に脱臼肢位の指導を行うことが良いのではないかと考えた。そのため15時のトイレ誘導後にパンフレットを用いた脱臼予防の指導を行い、本人が興味を示すことができるパンフレットを作成しA氏の退院後の生活を見据えて本人が脱臼肢位について注意することができるように取り組みたいと考える。 |
||
判定 | 承認 |
摂食嚥下障害のある重症心身障害児(者)におけるベッド上とリクライニング車椅子移乗での摂食姿勢の検討~A氏に適した摂食姿勢を目指して~
申請番号 | 05-09 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 橋本 史子 |
課題 | 摂食嚥下障害のある重症心身障害児(者)におけるベッド上とリクライニング車椅子移乗での摂食姿勢の検討 ~A氏に適した摂食姿勢を目指して~ | |
【概要】 重症心身障害児(者)は、運動機能障害や姿勢の異常などさまざまな障害をもつ。その程度は、日常生活にほとんど支障がないものから、日常生活のほとんどに生涯にわたり介助を要するものまで実に多様である。重症心身障害児(者)は、筋緊張などの要因により、自分で姿勢を調整することが困難であるといわれている。先行研究において摂食姿勢が嚥下機能に影響することが多く報告され、誤嚥を呈する脳性麻痺児がリクライニングを用いて摂食した場合、誤嚥が減少したとの報告もある。 今回研究対象のA氏は、既往歴に主に脳性麻痺、統合失調症、パーキンソン症候群、てんかんがあり、処方薬を継続して内服しており、長期にわたり入院生活を送っている。日常生活動作(ADL)は複数名による介助を要し、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーション(以下、リハビリ)を実施されている。摂食時における摂食姿勢は、リハビリによる摂食介助方法に基づき、ベッド上では60度ギャッチアップを行い、U字型クッションのみを使用し上体・両上肢を挟み肘をついて固定する方法と、リクライニング車椅子では60度ギャッチアップ指定だが目印がなく介助担当者により角度が異なる方法の二種類がある。しかし、A氏だけでは摂食姿勢保持は難しく、時折筋緊張やむせ込みにより姿勢が崩れてしまい、摂食嚥下障害のあるA氏にさらに誤嚥リスクが高まり、誤嚥性肺炎に繋がってしまう恐れがある。 そのため、A氏のベッド上とリクライニング車椅子移乗での摂食姿勢や、筋緊張、食事内容、むせ込みの回数を比較し摂食姿勢を再検討することで、A氏の摂食姿勢を調整し、誤嚥リスクを軽減させることができるのではないかと考えた。また、A氏がもつ嚥下機能や開口機能、前傾姿勢などを明らかにしたうえで、リハビリスタッフとともに安楽な摂食姿勢を話し合い追求することで、A氏の咄嗟の筋緊張に対するむせの緩和や摂食時の安全性の確保に繋がると考える。 |
||
判定 | 承認 |
上気道気管狭窄症(気管軟化症)を弊病する重症心身障害児へのポジショニングによる経皮的動脈血酸素飽和度の低下予防の効果
申請番号 | 05-08 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 権藤 太陽 |
課題 | 上気道気管狭窄症(気管軟化症)を弊病する重症心身障害児へのポジショニングによる経皮的動脈血酸素飽和度の低下予防の効果 | |
【概要】 今回研究対象のA氏は、上気道気管狭窄症(気管軟化症)を患っており、ネーザルハイフローによる酸素療法を行っていたが、経鼻エアウェイにて酸素化の安定を図るために離脱して様子を見ていた。しかし、覚醒時は緊張や分泌物貯留による気管の閉塞があり、入眠時は舌根後退・沈下による気管の閉塞があり、覚醒時入眠時ともに高い頻度で呼気吸気時に喘鳴を認め、無呼吸症状もあり酸素化不良が度々顕在したため、経皮的動脈血酸素飽和度(以降、SpO2とする) 90%以上を保つ様に酸素を適宜調整し常時吸引を行うこととなった。このような酸素化が不安定な場合に、看護師が各々のやり方で適宜ポジショニングの変更を行なっており、急激に呼吸状態が悪化する可能性もあると考えた。現在行われている経鼻エアウェイ、酸素の使用に加え、全身的な姿勢の管理が気道狭窄への対応としても重要であるとされているため、SpO2が90%以下に低下しないための統一したポジショニングの確立を図ることを目的とし、ポジショニングの検討を行いたいと考えた。 |
||
判定 | 承認 |
重症心身障害児に対する排痰援助の有効性~腹臥位実施中にカフアシストを実施して~
申請番号 | 05-07 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 中尾 詩織 |
課題 | 重症心身障害児に対する排痰援助の有効性~腹臥位実施中にカフアシストを実施して~ | |
【概要】 重症心身障害児とは重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態をいう。重症心身障害を持つ人の多くは呼吸器系に関連した問題を持ち、肺炎を発症することが多い。自力での姿勢変換や咳嗽が難しく、また口腔内に痰が上がってきても口腔外に出せないなど、自己喀痰が困難である。そのため、呼吸器系に問題を持つ重症心身障害児へのケアとして、理学療法実施をはじめ、日常生活においても排痰が行えるよう、各個人に合わせた環境設定が必要になる。腹臥位姿勢は、口腔から痰や分泌物が排出しやすい姿勢の一つであり、さらにリラクゼーションなどの効果も期待される。また、重症心身障害児(者)の生命予後に直結する下気道感染・慢性呼吸不全は、できるかぎり非侵襲的に予防することが重要になる。近年、神経筋疾患や重症者に対してカフアシストを用いた呼吸理学療法が普及しつつある。 今回の研究対象のA氏は、新生児仮死で脳性麻痺があり、自発呼吸がなく人工呼吸器を装着している。体位変換を実施していたが、自発呼吸がなく、自力での排痰が困難なことから、肺炎を発症した。吸引で排痰を行っているが、肺副雑音が持続しており、背部に痰貯留がみられ、換気量やSPO2低下が見られるようになった。腹臥位を行うことで、背部に貯留した痰が多量に喀出され、SPO2が安定したという文献や、カフアシストを継続的に使用したことで気道クリアランスが保たれやすく、分泌物貯留や無気肺予防に有効であったという文献が明らかになっている。それを基に、A氏に統一した腹臥位時のカフアシストを行うことで、排痰が促され、換気量やSPO2の低下なく呼吸状態が安定するのか明らかにしたいと考える。 |
||
判定 | 承認 |
慢性呼吸器疾患患者に対するセルフケアマネジメント教育によるQOL維持・向上するための継続支援効果について
申請番号 | 05-06 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 徳久 千晶 |
課題 | 慢性呼吸器疾患患者に対するセルフケアマネジメント教育によるQOL維持・向上するための継続支援効果について | |
【概要】 【研究の背景】 近年、約17万人が在宅酸素療法利用者であり、そのうちの70%が呼吸器疾患の患者である。慢性呼吸器疾患患者の場合、在宅酸素療法による適切な酸素供給によって、患者の日常生活の質が向上、症状の軽減の他、慢性閉塞性肺疾患(以下COPDと略す)や他の呼吸器疾患の進行を遅らせる効果も期待されている。一方で、自己中断する実態もあり、在宅酸素療法を行う患者が実際の生活では酸素を処方通りに使用していないといった状況は少なくない。患者個々の病気や生活の体験を十分に理解し、その人の目指す生活のあり方を捉えた上で具体的なマネジメント法を話し合う等の細やかな支援が重要である。 今回研究対象のA氏は、慢性閉塞性肺疾患により2021年11月から在宅酸素療法(以下HOTと略す)を導入している。2022年2月にCOPD、肺非結核性抗酸菌症(NTM)増悪により入院しているが、退院後は、訪問看護や訪問リハビリの導入を行い、在宅で療養生活をしている。月一回の定期通院はできており、呼吸状態の増悪はなし。しかし、訪問看護記録や外来通院時に「酸素を使わなくても酸素の値は下がらない。なぜ酸素を使わないといけないか分からない。」と発言があり、患者が疾患の理解やHOTの必要性を理解していないことがわかる。また、在宅では酸素を使用しているが、呼吸苦などの自覚症状がないため、外来受診時には自己判断で酸素を使用していない。このため、HOTの必要性を理解し、適切な医療を納得して受け入れることが出来るように関わる必要がある。今回、この患者の事例を通して、文献を踏まえセルフマネジメント教育を図り、継続した支援に、向け取り組みたい。 |
||
判定 | 承認 |
隔離、長期入院による精神的ストレス、気分転換不足に対する看護
申請番号 | 05-05 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 高尾 茜里 |
課題 | 隔離、長期入院による精神的ストレス、気分転換不足に対する看護 | |
【概要】 結核は感染症法では2類感染症に定められており、喀痰塗抹検査陽性患者、呼吸器等の症状から入院が必要とされる患者、近い将来感染性が高くなると判断される患者は勧告入院となる。治療は内科的治療法が主体であり標準治療を行うことにより約90%が治癒することが可能である。しかし,治療には数カ月間の入院と6ヶ月以上の多剤投薬期間が必要であり、これが不十分だと耐性菌の出現をもたらし治療が著しく困難になる。また、高齢者では治療薬の副作用や糖尿病、腎疾患などの基礎疾患、合併症により9ヶ月間まで治療期間を延長する場合もある。 A氏は他院入院中に肺結核と診断され当院に入院。高血圧、高コレステロール血症、心房細動の既往あり、抗結核薬の他に複数の薬剤を内服されている。前医入院前は長男夫婦と3人で暮らしていた。抗結核薬の副作用により食欲不振あり点滴施行中。入院時より「泣くごた 寂しか 気の毒か もう死んでもよか」など悲嘆的な訴えあり。入院による環境の変化、看護師への気兼ね、直接面会はあるが10分程度であり容易に会えないこと、長期に多量の薬剤を服用しなければならないことによりストレスを感じていると予測される。そのためストレスなく入院生活を送れるような関わりが必要であると考えられる。 結核と診断され長期入院となった患者に対しコミュニケーション、気分転換を図ることで、ストレスの軽減に繋がったかを明らかにする。 |
||
判定 | 承認 |
慢性便秘症を抱える終日臥床状態の重症心身障害児者に腹部マッサージを用いることによる効果
申請番号 | 05-04 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師 | 古賀 沙也花 |
課題 | 慢性便秘症を抱える終日臥床状態の重症心身障害児者に腹部マッサージを用いることによる効果 | |
【概要】 重症心身障害児者病棟の患者は、運動障害による活動不足、抗けいれん薬等の服用による腸蠕動運動の低下、体幹の変形や拘縮のため、適切な腹圧がかけられない等により便秘が慢性化しやすい1)。また、慢性便秘症は、完治することはない慢性疾患であり、QOL低下だけでなく生命予後に悪影響を及ぼすとされている。当病棟でも、便秘を患っている方は多く、排便コントロールのためにグリセリン浣腸(以下、浣腸)の使用や緩下剤の服薬を行っている方は多い。排便は、生存に欠くことのできない基本的・本能的欲求の一つであり、快適に生活するための重要な要素である。浣腸は、穿孔・擦過傷など直腸壁の機械的損傷を引き起こすとともに、グリセリンによる溶結反応2)を起こす可能性がある。そのため、対象患者への浣腸実施による苦痛を軽減し、自然排便を促す必要がある。 今回研究対象のA氏は、痙性四肢麻痺や胸部変形による機能障害を持ち、終日臥床状態である。そのため、活動低下による精神的ストレスを抱え、筋力低下や腹圧減少に繋がっていると考えられる。また、長期に渡り抗けいれん薬を服用していることで薬剤性便秘を引き起こしている。現在、モビコール®配合内容剤とツムラ漢方大建中湯エキス顆粒を毎日服薬し、麻痺性イレウスの既往があるため1日排便なければ浣腸を実施している。ブリストルスケールは6~7程度と軟便傾向であり、浣腸後の反応便は必ずあるが、浣腸後であってもガス貯留や腹部膨満感を認める日もあり自然排便が難しいため、状況により摘便を行っている。腹部マッサージを行うことは、自然排便の増加と、浣腸の実施回数を減らすことに繋がるとされている。 腹部マッサージを行うことで、自然排便を促し、腹部膨満感やガス貯留を軽減し、浣腸実施回数を減少させる取り組みを行いたいと考える。 |
||
判定 | 承認 |
倫理的感受性を高める取り組み
申請番号 | 05-03 | |
---|---|---|
申請者 | 看護師長 | 柴田 美絵 |
課題 | 倫理的感受性を高める取り組み | |
【概要】 看護倫理の基本は、患者の身になって問題をとらえなおすこと、患者の「人権」や「自由意志を尊重」した「最善のかかわり」を「内省」する事にあると述べられている1)。日本看護協会は、看護職の職業倫理として「看護職の倫理綱領」を公表している。「看護職の倫理綱領」は看護を取り巻く状況の変化を受け、2021年3月に改訂され条文16が追加された。また看護職の倫理綱領の前文では、あらゆる実践を行う看護職者を対象とした行動指針であり、自己の実践を振り返る際の基盤となること、専門職としての責任範囲を社会に明示するものであることが述べられている。 臨床では、様々な価値観や考えを持った患者に対し、看護専門職として、患者の立場に立って問題をとらえ、患者の人権や意思を尊重した最善の看護実践が求められている。しかし、実際には患者と家族、患者と医療者間の意向のずれ、医療チーム者間の考え方の違いなど、看護師は様々なジレンマを抱えながら、日々の看護実践を行っていると考える。ジレンマを感じたとき、倫理カンファレンスが開催されるが、カンファレンスにおいては看護者自身の倫理観に加え看護職業人としての倫理観も重要となってくる。 当院でも、昨年度から倫理に関する学習会や、倫理カンファレンスを実施し看護職の倫理綱領については周知出来ているが、看護職の倫理綱領の内容までは周知出来ていない現状がある。 このため、倫理カンファレンス定着に向けた取り組みを行い、管理者のみならずスタッフが主としての倫理カンファレンスの実施ができ、日々の看護実践の中で看護職の倫理綱領を意識した看護の実践が出来るように支援する必要がある。 今回、アンケートを基に実施した取り組みがどのような効果をもたらしたのか、取り組み前後のアンケート結果と各病棟の倫理カンファレンス開催状況及び内容を基に評価したいと考える。 |
||
判定 | 承認 |
看護師の急変予測の実態と臨床能力向上に向けた取り組み(10SOVを活用したシミュレーション学習会を実施して)
申請番号 | 05-02 | |
---|---|---|
申請者 | 副看護師長 | 山口 裕二 |
課題 | 看護師の急変予測の実態と臨床能力向上に向けた取り組み (10SOVを活用したシミュレーション学習会を実施して) |
|
【概要】 自施設は病状が変動し重症化に至るなど、急変リスクの高い患者が少なくない。看護師は日々患者の全身状態をアセスメントし、早期に患者の状態変化に気付き、重症化を回避するため、急変回避のための指標(10SOV)を推奨し実践している。患者の急変前徴候は6~8時間前に現れていると言われており、指標を用いて観察の視点を強化することで急変回避に繫がり、医師への報告および迅速な対応に繫がることが予測される。先行研究において、バイタルサインに基づいた臨床評価ツール「早期警戒スコアNationalEarly Warning Score(NEWS)」や「修正早期警戒スコアModified Early Warning Score」は、患者急変を予知できるツールとして有用であると言われており、 スコア指標をもとに症例を振り返り患者の前兆に気付き、異常の早期発見や重症化を予測した看護ができていたのか検討し現状や課題を明らかにしている。自施設においても、病状が変動し急変に至った事例は多くある。そこで、看護師の急変予測の実態を把握し、急変に至った事例を抽出し、その事例のシミュレーション学習会を実施することで、看護師の臨床能力向上につながったか検証したいと考えた。その取り組みを研究として報告する。 |
||
判定 | 承認 |
情報伝達エラーを回避するための取り組み~SBARトレーニングを実施して~
申請番号 | 05-01 | |
---|---|---|
申請者 | 医療安全管理係長 | 陣内 紀子 |
課題 | 情報伝達エラーを回避するための取り組み ~SBARトレーニングを実施して~ |
|
【概要】 医療機関で発生しているインシデント・アクシデント事例において、“情報伝達エラー”に関する事例は少なくない。また、医療事故の原因の約7割がコミュニケーションエラーであると言われている。石川は「同職種間でも職種経験年数や経験の内容の違いにより“情報伝達エラー”が発生する可能性がある。異なる職種間では、その教育内容や業務の専門性、および思考の特徴などの影響を受けて、より一層“情報伝達エラー”が発生する可能性があると述べている。したがって、医療従事者が適切な情報伝達を行い、医療安全を守るための知識と技術を身につけることは重要な課題である。自施設においても情報伝達エラーに関連したアクシデントが発生しており、早急に取り組むべき課題である。情報伝達エラーを回避するために石川は「SBARは、コミュニケーションを標準化するツールであり、SBARを活用すると、臨床経験や知識の違いにかかわらず、適切な情報の伝達が可能となり、コミュニケーション防止対策としても効果が期待できると延べ、SBARの活用を提唱している。先行研究からもSBARトレーニングやSBARを活用した演習の効果が多く報告されている。そこで今回、患者の病態変化時に患者の状態とアセスメントした内容を医師へ正しく伝える事を目的に、自施設の看護師に対しSBARトレーニングを実施し、その効果を検証する。 |
||
判定 | 承認 |